痛みが少ない「いぼ痔(内痔核)」
痛みがある「いぼ痔(外痔核)」
肛門周辺にはクッションの役割を持った静脈叢があって、ここには毛細血管が豊富に集まっています。いぼ痔とは、便秘や下痢や排便時の強いいきみで肛門に長時間負担がかかり血液の循環が悪くなることで、肛門の静脈叢がうっ血して腫れを起こした状態です。
肛門の皮膚と直腸粘膜の境目を「歯状線」と呼び、この内側に発生するいぼ痔(痔核)が「内痔核」、外側に発生する痔が「外痔核」です。
内痔核は痛みが生じづらい一方で、外痔核は激しい痛みが生じる場合があります。どちらも治療を行う必要がありますが、治療法がやや異なります。繊細な疾患であり、なかなか人に相談できず長くお困りの方も多いと思いますが、健康と生活の質を維持するため、なるべく早めに当院までご相談ください。
内痔核
歯状線の内側に直腸粘膜下の静脈叢がうっ血して腫れている状態のことです。
排便時の出血や肛門の出っ張り(痔核の脱出)によってはじめてわかるケースが大半を占めます。直腸粘膜には知覚神経がないので痛みを感じることはほとんどありませんが、脱出した痔核が戻らなくなって強く締め付けられる状態(嵌頓)になると強い痛みを伴うようになります。
外痔核
歯状線の外側(お尻の皮膚)にできるいぼ痔のことです。
外痔核はご自身で腫れを触ることができ、痛みを伴うことが多いのが特徴です。
血栓性外痔核は肛門周辺のうっ血によってできた血栓が、いぼのように腫れ血豆のようになった状態です。血栓は徐々に溶けて自然に吸収されます。サイズが大きい血栓の場合には、消失まで数ヶ月かかることもあります。
いぼ痔の原因は?
いぼ痔のよくある原因は、下痢や便秘が長引くことや排便時のいきみ、長時間座りっぱなしの姿勢などが原因だと考えられています。慢性的に皮膚や粘膜に負荷がかかり、肛門周囲の静脈叢がうっ血して痔核ができます。
その他、肉体労働、妊娠・出産、香辛料やアルコール摂取のし過ぎなどもリスク因子となると考えられています。
重度の下痢や便秘が起こっている場合、あるいは治療を受けてもいぼ痔が頻発する場合は、クローン病などの大腸疾患が潜んでいる恐れもあります。
いぼ痔の初期症状・主な症状
外痔核
外痔核は、歯状線の外側(皮膚)に発生するいぼ痔であり、以下の3つに大別されます。
病態・症状 | |
皮垂 | 歯状線の外側の皮膚がたるんでできるため、痛みは起こりません。 |
血栓性外痔核 | 肛門の周りの静脈が破壊され、血栓ができて腫れたものです。腫れや痛みの大きさは人によって異なります。 |
肛門菅内外痔核/中間痔核 | 歯状線の内側に生じるいぼ痔(内痔核)から続いて、歯状線の外側に発生したいぼ痔です。 |
内痔核
内痔核は、歯状線の内側(直腸粘膜)に発生するいぼ痔であり、外痔核と比較して痛みは起こりづらいです。
以下のように、5段階の経過を進みます。
病態・症状 | |
内痔核1度 | いぼが常に歯状線の内側にある状態です。 稀に痛みや出血が起こります。 |
内痔核2度 | 排便時などにいきむと、いぼが歯状線の外側に飛び出します(脱肛)。 その後、いぼは自然に内側に戻ります。稀に痛みや出血が起こります。 |
内痔核3度 |
排便時などにいきむと、いぼが歯状線の外側に飛び出します。自然に内側に戻りませんが、指などで押すと戻ります。 |
内痔核4度 |
いぼが常に歯状線の外に飛び出している状態です。 |
嵌頓痔核 |
脱出した痔核が肛門括約筋に締め付けられ、大きく腫れあがり、激しい痛みが生じた状態です。 |
いぼ痔の治し方(薬)・手術
内痔核・外痔核・血栓性外痔核はそれぞれ治療法が異なりますし、進行度によっても治療法は異なります。
内服薬や外用薬を用いて治療しますが、根本的な治療は手術です。手術の選択肢もいくつかあります。手術が必要な場合でも、ほとんどのケースで日帰り手術治療できます。痔が大きい、抗凝固・抗血小板剤を内服している、再発症例など、入院設備のある施設での手術が望ましいと考えられる場合には、適切な医療機関を紹介いたします。
当院では肛門の疾患を専門とした医師が、患者様の症状に応じて適切な内服薬や外用薬を選択し、日々の生活に支障がないように適切な手術方法を提案させていただきます。
ジオン注射(ALTA療法)
内痔核に対して薬剤を注射する治療法です。
特殊な薬剤を内痔核に注入して痔核への血流を抑え、痔核を硬化・縮小させます。注射から1週間~1ヶ月程度で痔核が徐々に縮小します。
位置、深さ、角度、注入量が厳密に決められている高度な治療法であり、特別なトレーニングを受けた専門の医師にしか行うことができません。当院では、この治療法に精通した医師が治療を行っています。約20%の再発リスクがありますが、内痔核分類1度から3度前半では根治性が期待できます。治療中の痛みがほとんどありませんので、身体的・精神的負担が非常に軽く、治療に時間をかけられない方には適切な治療法といえます。
結紮切除術
痔動脈を結紮し、痔の本体を切除する方法です。内痔核・外痔核の区別なく根治が期待でき、再発も少ない治療法ですが、術後の出血の可能性があること、創傷治癒に数週〜2ヶ月を要することから、術後も数回は通院をしていただきます。
ジオン注射+結紮切除術
内痔核と外痔核のどちらもできている方に行う治療です。
内痔核はジオン注射で、外痔核は結紮切除術で治療するハイブリッド手術です。
また、広範囲に痔核が認められる場合、切除範囲を小さくする目的でハイブリッド手術を行うことで、術後の肛門狭窄や変形などのリスク軽減につながります。
なお、日帰り手術で対応できるため、入院は必要ありません。
いぼ痔は自然治癒するのか
内痔核・外痔核どちらも自然に治るものではありません。
痔核は薬物療法で制御できることが多いですが、いぼの縮小・消失のためには、ジオン注射や手術が不可欠です。