下痢が続く原因
下痢は、小腸での水分吸収量の不足や分泌の増加、大腸での水分吸収量低下によって生じます。明らかな原因が分かっていてすぐに治まり、繰り返さない場合には問題がありませんが、強い症状がある、症状が長引く、慢性的に繰り返す場合には疾患の症状として生じている可能性が高く、原因を確かめることが重要です。
食べ物や飲み物
暴飲暴食にはお気をつけください。胃腸の機能が低下し、下痢に繋がります。
ストレス
冷えやストレスによって自律神経のバランスが崩れ、腸の動きが活発になりすぎることで、腸が吸収する水分量が不十分となり、便がゆるくなることがあります。
食中毒
俗に言う「食あたり」です。飲食物に含まれる細菌やウイルスによって、発熱や腹痛が起こり下痢に繋がります。
食物アレルギー
小麦・魚介など食物にアレルギーがある方は、アレルギーによって腸管内の分泌液が過剰になります
薬の副作用
お薬によって下痢が起こる場合もあります。特に、抗生物質によって腸内の有効な細菌が死んでしまい、下痢に繋がります。
大腸腫瘍や炎症
大腸がんや潰瘍性大腸炎、クローン病といった疾患でも慢性的な下痢を繰り返します。
過敏性腸症候群
受診すべき下痢の症状
- これまで感じたことがないくらい強烈な下痢
- 排便後も腹痛が長引く
- 血が混ざった便が出る
- 吐き気・嘔吐の症状がある
- 時間が経って症状が重くなっている
- 同じものを食べた人に同じ症状が現れている
- 脱水症状が起こっている
(尿が少ない・出ない、尿が濃い、のどの激しい渇きなど)
上記の他にも、急激な下痢や腹痛が生じてトイレに間に合わないかもしれないと不安になるなど、日常生活に悪影響がある場合も、早急に当院までご相談ください。
下痢の種類
下痢は、2週間以内に改善する一過性の急性下痢と、一か月以上長引く慢性下痢に大別され、それぞれさらに2種類に細分化されます。
急性下痢
浸透圧性下痢
高脂肪食やお酒の飲み過ぎによって腸に大きな負担がかかり、吸収機能が下がることで便中の水分量が増え、下痢に繋がります。
分泌性下痢
食あたりや食中毒、お薬の副作用、食物アレルギーなどが原因で腸粘膜がダメージを受け、分泌液が増え過ぎることで下痢に繋がります。
慢性下痢
蠕動運動性下痢
消化管の内容物を次の場所に運ぶ蠕動運動が過剰になり、きちんと水分を吸収できない状態で排便することで起こる下痢です。
滲出性下痢(潰瘍性大腸炎やクローン病など)
腸の炎症によって、粘膜から細胞内の液体や血液成分が腸管内に流出し、水分吸収機能が弱まることで便中の水分量が増加し、下痢に繋がります。
下痢の対処法
下痢の原因や種類に応じて対処法に違いがあります。重度の下痢が起こっている場合、あるいは吐き気や発熱、血便などの症状も起こっている場合は、ご自身で判断せずに当院までご相談ください。
急性下痢の場合
重度の下痢によって脱水症状が起こる恐れがあるため、きちんと水分補給することが大切です。冷たい飲み物は控え、薄めの番茶や麦茶、湯冷まし、ぬるめのミネラルウォーターなどを少量ずつ、何回かに分けて飲むようにしてください。
胃腸を安静にするため、食事は消化しやすいものにしてください。例えば、野菜スープ、すりおろしたリンゴ、おかゆ、卵料理、低脂肪の白身魚や鶏のささみなどが推奨されます。
慢性下痢の場合
慢性下痢は別の疾患の症状として起こる場合があるため、原因を特定するためにも消化器内科を受診しましょう。特定の食品を食べると下痢が起こる場合は、その食品の摂取を控えてください。消化しやすく栄養分が豊富な食品を選択し、腸に負担がかかりづらい食事にすることが有効です。例えば、うどん、柔らかいご飯、じゃがいも、さといも、白身魚、鶏のささみ、赤身の牛肉、卵、納豆、豆腐、リンゴ、バナナ、ヨーグルトなどをお勧めします。
下痢の治し方
水分補給
急性下痢の治療では水分補給が非常に重要です。経口摂取が可能な場合は、ぬるめの経口補水液やスポーツドリンクを少量ずつゆっくりと飲みましょう。嘔吐や腹痛があって経口摂取が難しい場合は、医師に相談し点滴を受けてください。
薬物治療
腸内細菌をコントロールするビオフェルミン®、ミヤBM®、ラックビー®などの整腸剤を処方します。
激しい腹痛があれば、ブスコパン®、チアトン®などの腸の激しい収縮を抑制するお薬を使う場合があります。
深刻な細菌性腸炎の場合や病状が長引いている場合は、抗菌薬を3~5日間内服して頂くこともあります。
市販薬について
ご自身の判断で市販薬を使用すると、逆に病状が悪化することがありますので、消化器内科を受診することをお勧めします。
止瀉薬(ししゃやく)には下痢を抑制する作用があります。なお、食中毒などの感染性下痢の場合、病原体を排出できず、病状が重くなる恐れがあるため、服用を避けてください。
乳酸菌、酪酸菌、ビフィズス菌などが入っている整腸薬は、腸内環境をコントロールする作用があるため効果的です。また、漢方薬も候補の1つとなります。
下痢で考えられる病気
潰瘍性大腸炎、クローン病
大腸粘膜で慢性的な炎症が発生する疾患で、血液や粘液が混ざった便が出ます。
症状
主な症状は腹痛、下痢、血便で、症状がある時期と無い時期を繰り返します。適切な治療には大腸カメラ検査による確定診断が不可欠です。軽度の炎症や狭い範囲の炎症であれば無症状のこともあります。原因は分かっていませんが、自己免疫反応の異常による影響があると言われています。
過敏性腸症候群 (IBS)
情緒不安定や精神的ストレスによって、慢性的な便秘や下痢に繋がります。
症状
下痢のほか、便秘や腹痛もよく起こります。症状は数週間長引く場合もあれば、自然に落ち着く場合もあります。
食中毒や感染症
ノロウイルス、ロタウイルス、O-157、カンピロバクター、サルモネラ菌などの感染が原因で発生する急性の下痢です。
症状
下痢だけでなく、吐き気・嘔吐、腹痛、血便、発熱、脱水などの症状が起こります。原因菌によって症状に違いがあります。脱水の可能性がある場合や、激しい症状が続く場合は早めに消化器内科を受診してください。
大腸ポリープ
大腸粘膜にできたイボ状の病変です。良性なことがほとんどですが、放っておくとがん化することがあります。また、はじめから悪性の場合もあります。
症状
発症初期は自覚症状が乏しいです。巨大化すると、便秘や下痢、血便などが起こる場合があります。
大腸がん
大腸がんが悪化すると、大腸の管腔が狭窄し、下痢と便秘が頻発する場合があります。
症状
下痢だけでなく、血便、便秘が起こる場合があります。
乳糖不耐症、消化管アレルギー
乳糖不耐症は、乳糖を分解する消化酵素の不足が原因で生じます。消化管アレルギーは、卵や牛乳、小麦など特定の食品に対するアレルギー反応のことです。
症状
下痢だけでなく、嘔吐、腹痛が生じることもあります。
虚血性腸炎
何かしらの要因で大腸への血流が停滞することで、急激な粘膜障害と激しい炎症が起こります。
症状
急激な下痢、腹痛、血便が起こります。
慢性膵炎
膵臓からの消化酵素の分泌が減少することで消化不良となり、それが原因で下痢が起こります。
症状
下痢だけでなく、腹痛、体重減少、脂肪便などが起こる場合があります。
下痢の検査と治療法
はじめに問診で便の頻度や状態、生活習慣や食生活、下痢以外の症状などを伺います。渡航歴や服薬歴、ご家族の腹部症状の有無、生活環境の変化なども診断に有効な情報ですので、可能な限り詳しくお伝えください。問診の内容に応じて最適な検査・治療を行いますので、なるべく正しい情報を伝えてください。
血液検査
炎症反応や脱水の確認、場合によっては栄養状態や血清アミラーゼなどもチェックします。
腹部レントゲン、CT検査
レントゲンによって、腸管内の異常なガス像などの有無を調べます。
便検査
感染症の恐れがあれば、便培養検査で原因菌を調べます。
腹部エコー検査
腎臓、肝臓、胆のう、膵臓などの状態を確認します。また、腸管の炎症や腹水によるむくみなども調べることが可能です。
大腸カメラ検査(大腸内視鏡検査)
慢性的な下痢や出血が起こっている場合に実施します。大腸ポリープ、大腸がん、潰瘍性大腸炎の有無は自他覚所見から確認することは困難であり、大腸カメラ検査で直接粘膜の状態を観察しなければなりません。
下痢はご相談ください
下痢でお困りの方は、お気軽に当院までご相談ください。
下痢が長引くと体内の水分バランスが乱れ、脱水状態になる恐れがあります。また、いつ便意を催すのか心配で外出できない、電車に乗れないということにも繋がり、日常生活への悪影響も懸念されます。
下痢が1週間以上長引く場合だけでなく、下痢によって日常生活に影響が出ている場合もご相談ください。