肛門外科について
肛門外科では、消化管の出口である肛門と、肛門に至る直腸の診療を行います。よく見つかる病気には痔が挙げられ、いぼ痔(痔核)、切れ痔(裂肛)、肛門周囲膿瘍、痔ろう(あな痔)などの種類があります。大腸や肛門の病気は早期発見によって悪化する前に最適な治療をすることで、時間をかけずに完治が見込める場合もあります。
当院では、下血の症状が起こっている方や、便潜血検査で陽性となった方に大腸カメラ検査をご案内しています。検査の結果、痔が原因と判明した場合は、外用薬や内服薬、注射、手術などで治療を行います。入院による治療が求められる場合は、連携している高度医療機関にお繋ぎし、患者様がスピーディーに適切な治療を受けられるようサポートいたします。
肛門の構造
肛門は、肛門周辺の静脈叢(じょうみゃくそう)や内肛門括約筋、外肛門括約筋によって収縮します。静脈叢は、毛細血管が集まってクッションのように働くことで、肛門が隙間なく固く閉じるようにしています。また、直腸と肛門の皮膚の境目には歯状線(しじょうせん)が存在します。
歯状線には肛門陰窩(こうもんいんか)という小さな穴が並んでおり、肛門腺からの分泌物が出ます。
肛門の症状はご相談ください
- 肛門から出血している
- 肛門にしこりを触れる
- 血便が見られる
- 排便時に痛みが生じる、排便がしづらい
- お尻がジクジクしている
- 肛門にかゆみがある
- 肛門から臓器のようなものが脱出している
など
肛門の検査
デジタル肛門鏡
当院では、デジタル肛門鏡を使って検査を実施します。肛門疾患は基本的に患者様自身では確認できませんが、デジタル肛門鏡では医師と患者様が一緒に画像を見ながらチェックすることができます。患者様ご自身に現在の状態をきちんと確認頂くことで、生活習慣の見直しや治療の必要性をご理解頂けるようになります。また、治療の進捗を確認しやすくなるというメリットもあります。
肛門外科で行う治療
いぼ痔(内痔核)は切らずにジオン注射で治療可能
ジオン注射とは内痔核に対して、硬化療法により痔を収縮させる治療法です。
内痔核に直接注射しますが、位置、深さ、角度、注入量が厳密に決められている高度な治療法であり、特別なトレーニングを受けた専門の医師にしか行うことができません。
再発率が10%と高めですが、入院が必要なく、注射のみであるため、切開による痛みも感じません。
当院では、この治療法に精通した医師が治療を行っています。肛門の様々な症例に対応していますので、一度ご相談ください。
結紮切除術
結紮は縛るという意味で、この治療法では痔動脈を専用のゴム輪で結紮、痔の本体を切除し切り取ります。内痔核・外痔核の区別なく根治が期待でき、再発も少ない治療法です。術後の出血の可能性があること、創傷治癒に数週〜2ヶ月を要することから、術後も数回は通院をしていただきます。術後肛門に負担がかからないよう、便を柔らかくする薬や軟膏を処方します。食事についても、inが多くなればoutも多くなりますので暴飲暴食を控えていただきます。注意事項をお守りいただければ、根治療法として最も有効です
痔の日帰り手術
当院では、手術の要否を注意深く診察します。手術が必要な場合、患者様ときちんと話し合った上で、日帰り手術をご案内いたします。
肛門外科で扱う主な疾患
- いぼ痔(外痔核、内痔核)
- 切れ痔(裂肛)
- 肛門周囲膿瘍
- 痔ろう(あな痔)
- 肛門皮垂(スキンタグ)
- 肛門狭窄
- 肛門ポリープ
- 肛門がん
- 直腸脱
- 直腸粘膜脱
など
いぼ痔(内痔核、外痔核)
肛門周辺の血流が低下することでうっ血が起こり、静脈がこぶ状に膨張した状態をいぼ痔(痔核)と言います。様々な痔の種類の中で発症数が一番多く、また痔核ができる場所によって内痔核と外痔核に大別されます。
内痔核
肛門と直腸の繋ぎ目にある歯状線よりも内側にできた痔核を内痔核と呼びます。発症して間もなくは痛みが生じず、症状は出血が起こるくらいです。
当院では内服薬、座薬、軟膏を使った薬物療法とジオン注射と結紮切除術による手術を行っており、患者様と相談して治療方法を選択させていただきます。
外痔核
歯状線の外側にできた痔核を外痔核と呼びます。血栓性外痔核になって突然肛門痛が起こる場合があります。内痔核と同じく、内服薬、座薬、軟膏を使った薬物療法を行うほか、血栓性外痔核などで激しい痛みがあれば手術(切除)を検討します。
切れ痔(裂肛)
裂肛は切れ痔と言われることが多いですが、下痢や便秘によって肛門上皮が損傷し、出血や痛みが起こる状態です。裂肛が頻発すると、傷の内側に肛門ポリープ、外側にイボができる場合もあります。また、肛門が狭くなったり(肛門狭窄)、硬くなったりする場合もあります。
治療では、排便コントロールに加え、座薬や軟膏による薬物療法、日帰り手術などを行います。
肛門周囲膿瘍
肛門周囲膿瘍は勢いの強い下痢などによって歯状線にある小さなくぼみの肛門陰窩に便が入って細菌感染し、化膿することで発症します。飲酒、下痢や軟便、抵抗力が弱っている状態のときになりやすい病気です。発熱や激しい痛みなどの症状が起こります。肛門周囲膿瘍は速やかに切開して膿を出す必要があります。当院では受診当日に治療可能ですので、いつでもご相談ください。
痔ろう(あな痔)
痔ろうとは、肛門周囲膿瘍が悪化して、膿が肛門周囲の皮膚まで穴をあけながら進み、膿が排出されます。膿が進んだ穴がトンネル状に残ったものが痔ろうです。ろうは自然治癒しないので、治療するには手術が必要です。